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牧師たちの声(伝道者の喜び〜牧師たちの寄稿によるリレーエッセイ) 3 (肩書き等は2009年当時のものです)

 

「牧師の喜び」

塚本一正牧師(信夫教会)
(2012.04 現在 堺川尻教会

   10月16日(木)、教会の姉妹が96歳で逝去された。夕方知らせを受けた時、私は山形にいた。山形で刑務所教誨師の東北地区の研修会が木金二日間の予定で行われていたのである。知らせを受け、私は研修会を抜けてすぐに福島への帰路についた。牧師にはよくこのようなことがある。人間の計画の、主による変更である。
   亡くなった姉妹は、ここ約10年間寝たきりで、意思の疎通もできない状態で、施設に入居しておられた。教会員にとても愛された人で、年に1〜2度は教会の皆で施設にお訪ねしていた。しかし家族にキリスト者は彼女以外いなかった。6月に娘さんが訪ねて来られ、母逝去の際には、身内のみで、葬儀社の式場で葬儀を行い、司式だけ牧師に願いたいと申し出られた。教会の大切な姉妹であり、ぜひ教会で葬儀をしてほしいと頼んだが、ご家族の意志は固く、結局希望を受け入れるほかなかった。キリスト者の少ない我が国では、このようなこともよくあることである。
  16日(木)の夜、福島に帰り、すぐにご家族と葬儀の打ち合わせをした。翌金曜日に前夜式、土曜日に葬儀.火葬・納骨を行うこととなった。牧師館に帰り、準備にとりかかる。葬儀プログラムを作り印刷、前夜式の説教の準備、葬儀の説教の準備をしなければならない。さらに日曜日の礼拝の準備もしなければならない。このような、人間業では不可能とも思える状況に追い込まれることも牧師にはよくあることである。半ば途方に暮れながら、しかし主が導いてくださることを信じて、準備を進める。そして、実際に主の御業を目撃させていただくことになる。
   土曜日の葬儀礼拝の後、火葬場での待ち時間に、ご遺族の一人が話しかけてきた。「今回の葬儀は、ユニークだった、説得力があった、迫力があった」というようなことを繰り返し言われる。なぜ同じことを何度も言うのかと怪訝に思った。しかしそのうちに確信した。この人は、葬儀礼拝で、主の臨在に触れたのだと。御言葉が説き明かされる葬儀礼拝において、ご聖霊が働かれ、否定しようのない主の臨在がこの人を圧倒し、この人は、今どうしてよいかわからなくなっているのだと、私は確信したのである。私はその方と話しながら、「主は確かに生きておられる!主よ感謝します」と心の中で祈ったのである。
   牧師の喜びは、人間としては辛い思いや、途方に暮れる思いを度々味わいながらも、その中でたしかになされる主の御業を目撃させていただけること、しかもその主の御業のために自分が用いていただけること、そこに尽きると思う。

プロフィール
1964年   12月東京に生まれる。キリスト教とは無縁の家庭に育つ
1987年   大学卒業、就職
1990年頃  
    遠藤周作氏、三浦綾子氏の著作によりキリスト教への関心を強める
1991年   夏、生まれてはじめて主日礼拝に出席
         クリスマスに受洗(東京・高井戸教会)
1993年   仕事を退職
         東京神学大学3年次編入学
1997年   東京神学大学大学院修了
         信夫教会に赴任、現在に至る
2003年   福島刑務所教誨師となる
         飯坂教会兼務となる

 

>>目次 ====

●教授たちによるリレーエッセイ

1. わからずやの学校  (大住 雄一)

2. 狭き門、広き門!(朴 憲郁)

3. 神学することはリレーに似ている
(神代真砂実)

4. どん底のデモ・シカ(芳賀力)

5. 共に学びませんか
(ウェイン・A・ジャンセン)

●牧師たちの声(伝道者の喜び)

1. 献身の勧め(福島純雄)

2. 献身の勧め(松木進)

3. 牧師の喜び(塚本一正)

4. 献身の喜び(鈴木義嗣)

5. 二番煎じに生きる(宮本義弘)

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